長野県茅野市において、AI技術や水道使用量データを活用し、空き家の管理効率化と利活用促進に向けた実証調査を行いました。人口減少や高齢化が進む地方都市では、増加する空き家の把握が急務となっていますが、従来の現地調査に依存する手法では、早期発見や効率的な対応に限界がありました。本取り組みでは、行政による迅速な状況把握と、所有者の主体的な判断を支援する仕組みを構築し、持続可能なまちづくりや移住・二地域居住の促進を目指しています。

空き家課題を解決する3つのアプローチ

茅野市では、移住希望者が増加傾向にある一方、活用可能な空き家が市場に流通しにくいという課題を抱えていました。その大きな要因として、行政側が「どこに空き家があるか」をリアルタイムで把握できていないこと、そして所有者側が「自分の物件にどれだけの価値があるか」を知る機会が不足していることが挙げられました。これらの課題を解決するため、本調査では、以下の3つのシステムを構築し、その精度と有用性を検証しました。

  1. 水道使用量データを活用した空き家データベース
    毎月の水道使用量から空き家を自動抽出・可視化し、国土交通省が推進する「Project PLATEAU(プラトー)」の3D都市モデルをベースとしたマップ上で情報を一元管理するデータベースを構築。従来の空き家調査手法と比較して、空き家の早期発見における有用性が確認されました。
  2. AI老朽危険度判定システム
    撮影した建物外観画像を用いてAIが老朽危険度を解析・スコア化するシステムを開発。個人の主観に依らない判定や、優先的に対応すべき物件の抽出を可能にしました。
  3. 空き家簡易査定システム
    土地価格と建物残存価値から市場価値を即時に算出する査定システムを構築。修繕費の概算も併せて提示することで、所有者が売却やリノベーションといった具体的な検討を進めるための強力な後押しとなる有用性を確認しました。

制度面における成果

空き家対策における水道使用量データの活用は、個人情報保護の観点から自治体ごとに慎重な判断が求められてきました。本調査を通じ、国土交通省より「現行制度上、空き家の所有者情報の内部利用や査定結果の所有者への提供は可能である」との方針が明確化されました。これにより、法的な懸念を解消し、全国の自治体が安心してデータ活用に取り組める環境を整えたことも、本事業の大きな成果です。

今後の展望

今後は、老朽危険度や簡易査定の精度向上を図るとともに、より直感的に街の現状を把握できる仕組みへと進化させていきます。また、同様の課題を抱える他自治体への展開を見据えた汎用的なシステムの構築を進めていきます。